IBBPセンタースタッフ

IBBPセンター長

成瀬 清 基礎生物学研究所・特任教授

今後も起きる災害に備えて

IBBPは2011年3月11日におこった東日本大震災において、多くの生物遺伝資源が失われたことを受けて、このような損失を繰返さないことを目的に2012年から文部科学省のもと国の事業として開始されました。我が国ではその後も、熊本地震(2016年4月14日と4月16日)、北海道胆振地方東部地震(2018年9月6日)そして令和6年能登半島地震(2024年1月1日)など、大きな被害をもたらす震度7をこえる地震が頻発しています。さらに100年に一度と言われるような豪雨災害が毎年国内のどこかで起こっていることもご存じの通りであると思います。Covid-19によるパンデミックも勤務時間・場所の制限のため生物遺伝資源の維持管理を困難にしました。

災害多発国である我が国の研究・教育の継続性をその初期段階から支援するプロジェクトとして10年以上にわたりIBBPは活動を行っています。生物遺伝資源を安定的に保存し、未来の研究者に伝えるためには複数の場所で保管することが望ましいですが、スペースや維持コストの問題から個別に行うことは難しいのが現状です。このために、IBBPでは国内の研究者・技術者ならば誰もが利用できる集中バックアップ保管施設であるIBBPセンターを愛知県岡崎市にある基礎生物学研究所に設置し、個別研究者の要望によってそれぞれの研究者のもつ生物遺伝資源を大型の液体窒素タンクを用いてバックアップ保管しています。

ここで強調しておきたいことは平時でのバックアップ保管の重要性です。これこそが自分が用いている生物遺伝資源を将来も安定して利用できる環境をつくります。またそれを未来の研究者に届けるための基本ともなります。熊本地震や能登半島地震の惨状をみてもわかるように、災害が起こった後の生物遺伝資源レスキューはほとんど不可能です。大きな災害後は人命の救助が第一であり、それ以外は二の次にならざるを得ないということはご理解いただけると思います。平時に少しの手間をかけることで大きな災害があったとしても長期間安定して、自分自身が作ってきた研究材料を利用することができます。しかもIBBPの利用は無料です。離れた場所に自分専用の液体窒素タンクがあると考えていただければよいと思っています。これをお読みになってIBBPに興味をもたれた方は、ぜひお問い合わせください。


IBBPセンター長 成瀬 清

IBBPセンター担当者

   栂根 一夫 基礎生物学研究所・助教

加藤 - 秋元 愛 基礎生物学研究所・技術職員

松林 尚美 基礎生物学研究所・技術支援員

都築 千鶴 基礎生物学研究所・技術支援員

浜谷 綾子 基礎生物学研究所・技術支援員